上場前の資本政策

取引所の規定にしたがい、直前々期首以降に、特別利害関係者等が上場準備会社の発行する株式または新株予約権の譲受けまたは譲渡(新株予約権の行使を含みます。以下「株式等の移動」といいます。)を行っている場合には、当該株式等の移動の状況をⅠの部「株式公開情報 第1 特別利害関係者等の株式等の移動状況」において、開示する必要があります。

開示する項目には「取引単価」及び「価格の算定根拠」があります。

未上場株式における株主間の取引価格については、取引当事者同士の合意で決定して問題ありませんが、時価以外での取引については、上場準備会社としての株価に対する考え方が問われたり、取引における税務上のリスクに留意する必要があります。

※「特別利害関係者等」とは、次に掲げる者をいいます。

  • ① 上場準備会社の特別利害関係者(企業内容等の開示に関する内閣府令1条31号イに規定する特別利害関係者)
  • ② 上場準備会社の大株主上位10名(上場準備会社の従業員持株会を除きます。)
  • ③ 上場準備会社の人的関係会社(企業内容等の開示に関する内閣府令1条31号ハに規定する人的関係会社)及び資本的関係会社(企業内容等の開示に関する内閣府令1条31号ハに規定する資本的関係会社)並びにこれらの役員
  • ④ 金融商品取引業者等並びにその役員、人的関係会社及び資本的関係会社

取引所の規定にしたがい、直前々期首以降に第三者割当増資により株式または新株予約権(ストックオプションとしての新株予約権の発行を含みます。)の発行を行っている場合には、当該第三者割当の状況をⅠの部「株式公開情報 第2 第三者割当等の概況」において開示する必要があります。

開示する項目には取引単価、株数及び価格の算定根拠等があり、価格については時価での取引である必要があり、時価であることを示すため、原則として第三者機関からの価格算定書の取得が求められます。

 

ロックアップとは

上場準備会社の株主及び上場準備会社自身が、上場時ファイナンスに先立ち、上場日後一定期間、新株式の発行や株式(潜在株を含む場合もあります。)の売却等を行わない旨を確約することをロックアップといいます。

これは上場直後に株式市場の需給バランスに著しく影響のある行為を未然に防いだり、短期利得行為を防止するためのもので、上場後の堅調な株価形成を促すためにも必要とされています。ロックアップの内容は承認時に開示される有価証券届出書・目論見書等に開示されます。

 

制度ロックアップ

制度ロックアップとは取引所の規則により定められたロックアップのことを指します。

上場準備会社が直前期首以降に行った第三者割当による株式または新株予約権の割当てを受けた者は、当該株式または新株予約権を一定期間、継続的に保有することが求められます。

割当てを受けた株式または新株予約権の継続保有に関しては、割当日以前に確約書の締結が必須とされており、上場準備会社が直前期首以降に行った全ての第三者割当先からの確約書が無い場合には、上場申請が受け付けられません。

制度ロックアップの目的は、上場を利用した短期利得行為の防止であり、割当先の属性に応じてロックアップ期間が定められております。

株式及び新株予約権の第三者割当の場合、割当てを受けた日から上場日以後6か月間を経過する日(当該日において割当株式に係る払込期日または払込期間の最終日以後1年間を経過していない場合には、割当株式に係る払込期日または払込期間の最終日以後1年間を経過する日)まで、ストックオプション※としての新株予約権の割当ての場合には、当該新株予約権を、原則として当該新株予約権の割当日から上場日の前日または当該新株予約権の行使を行う日のいずれか早い日まで、それぞれ所有することが求められております。

※ストックオプションとは、上場準備会社が①上場準備会社の役員または従業員、②上場準備会社の子会社の役員または従業員に報酬として割当てた新株予約権のことを指します。

 

任意ロックアップ

任意ロックアップとは主幹事証券会社が任意に設定しているロックアップのことを指します。

株式上場時に新規上場会社の株式を投資家に販売するにあたり、大株主や新規上場会社の役職員が新規上場会社の株式を売却することは、今後業績の伸びが期待できないのだろうか、など投資判断における不安材料となることから、事前に株主から上場後一定期間、保有株式を売却しないこと等を約束いただきます。当該約束の内容は承認時に有価証券届出書・目論見書等で開示されます。

一般的なロックアップ期間は、「元引受契約締結日から上場日後180日目または90日目まで」です。また、ロックアップ期間中であっても公開価格の1.5倍以上で売却等ができる条項が付されている場合もあります。

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