種類株式による上場

米国ではAlphabet Inc.(Google)やFacebook, Inc.が種類株式を発行し、創業者が議決権の多くを保有していること(黄金株などと言われる)は有名です。日本のスタートアップでもこれを参考にし、種類株式の上場を検討する企業がいます。結論としては、現時点での上場制度上は不可能ではないですが、非常に厳しい条件が取引所より求められています。

上場制度上は議決権に差を設ける場合、議決権の少ない株式及び無議決権株式の上場が可能です。無議決権株式を上場させた場合は、普通株式を別途上場させることも可能です。つまり、二種類の株式が上場しているということになり、日本では伊藤園が無議決権株式を発行し上場させています。議決権の少ない株式を上場させた場合は、議決権の多い株式(普通株式)を上場させることはできません。

取引所より求められる条件の概要は以下の通りです。

①議決権の多い株式等により特定の者が経営に関与し続けることが、株主共同の利益であると認められ、かつ、そのスキームが当該必要性に照らして議決権の多い株式等の株主にとってのみ利益となるようなものでないこと。

これは、議決権の多い株式を有する経営者が創業者であり、発明者であって、その事業に必須であることを前提としています。

②議決権の多い株式等を利用する主要な目的が、上場予定会社の取締役等の地位を保全することまたは買収防衛策でないと認められること。

これは、自分の地位を守るために種類株式を利用しているわけではないことを条件としています。

その他細かい条件はありますが、上記だけであってもその必然性を説明することは極めて困難であり、買収されたくない、自分が経営者でい続けたい、というのは当然理由になりません。過去日本の取引所でもCYBERDYNE(7779)の1社のみが上場承認を得ています。

 

親子上場

親子上場とは、「親会社等」も上場しており、その「子会社」も上場しているケースのことを言います。

「親会社等」とは財務諸表等規則8条3項に規定する「親会社」及び財務諸表等規則8条17項4号に規定する「その他の関係会社またはその親会社」をいいます。上場準備会社が親会社は有していないが、その他の関係会社を有している場合も、上場審査上は親子上場として扱われますので留意が必要です。

日本だと代表的な親子上場はNTT(9432)NTTドコモ(9437)や、ソフトバンクグループ(9984)ソフトバンク(9434)ヤフー(4689)などがあります。親子上場では、親会社等または親会社等の株主と、子会社の株主との間で利益が相反する可能性があります。例えば、親会社等としては子会社に対し自社(親会社等)との取引を維持、継続してほしいとします。グループ内の取引であれば何かと融通が効くためです。一方で、子会社の株式を保有している他の株主からすれば、もっと取引条件のよい親会社等以外との取引を拡大してほしいと思うかもしれません。このように、親子が上場していると必ず利益相反となる事象が起きます。

現在取引所では、親子上場を禁止しておらず、世界でも親子上場をしている会社がいくつもありますが、特に子会社が後から上場する際には、その利益相反等に関するリスクについて投資家に対し適切に開示することが求められます。

なお、取引所からの要請により、親会社等も子会社の上場にあたって、経営方針、投資方針、今後の子会社株式の保有方針等を開示が求められるケースがあります。

また、上場準備会社が親会社等を有している場合、本来は上場会社のガバナンス上、特定の親会社等が大きな影響力を持つことは望ましいものではなく、将来的には親会社等による出資比率を下げる、親会社等の役員と兼職をする役員を減らすなどの対応を図り、上場準備会社が独自の経営を行えるような体制に移行していくことが望まれていることから、通常の上場審査項目に加え、主に以下のような審査項目が追加されます。

 
  • ・人的独立性を有していると認められること

親会社等の役職員と兼職または親会社等から出向している取締役の合計人数が、取締役会(委員会設置会社においては各委員会を含む)の半数以上を占める場合や定款において定められた決議要件の加重により、その経営方針の決定や業務執行に当たって親会社等の影響を強く受ける形態である等の関係ではないこと

 
  • ・物理的独立性を有していると認められること

事務所を借りている、コピー機等の機材、会議室、設備等を親会社等より無償で利用させてもらっている、など財務諸表に現れる現れないに関わらず、物的依存関係にないこと

 
  • ・金銭的独立性を有していると認められること

経営責任の明確化やインセンティブ付与といった合理性・必然性に乏しいと判断されるような、上場準備会社の事業運営に直接関わりのない親会社等の役職員による上場準備会社への出資や上場準備会社の事業運営に直接関わりのない親会社等の役職員への新株予約権の付与がないこと、また、親会社等からの金銭的な支援がないこと

 
  • ・中核的な子会社の上場

親会社等と実質的に同一の事業を行っている子会社、若しくは中核的な子会社(親会社等グループ の企業価値の相当部分を占めるような子会社)の子会社上場は、金融商品市場において実質的には新しい投資物件であるとは言えず、また、上場している親会社等が企業グループの中核事業を担う子会社を上場させて、新規公開に伴う利得を二重に得ようとしているものではないかと考えられることから、このような中核的な子会社の上場は原則禁止されております。

中核的な子会社の上場でないという判断を得るため、上場準備会社の事業が親会社等の主要事業ではないことを説明する必要があります。また、中核的でなくても、上場準備会社が親会社等の一事業部門かのようにみなされないために、以下の事象となっていることが必要です。

    • ・上場準備会社の日常の業務運営が上場準備会社自らの意思決定により行われており、親会社等からの指示のみで事業活動が行われていないこと
    • ・業務上の意思決定について、事前に親会社等からの承認を求められるような規定が存在していないこと
    • ・上場準備会社が製品に関する市場調査、開発、企画、立案等を行うなど、独自の開発力、技術力、ノウハウ等を有していること
    • ・価格交渉、新規顧客開拓、既存顧客に対する拡販活動等の営業活動を自らが行っていること
   

上場を目指す会社が子会社である場合には、親会社等に人的(出向社員など)、物理的(オフィスの間借りなど)、金銭的(売上や借入など)に依存していないかを今一度確認していただき、独立した企業体として上場を目指せる状態にあるかを判断していただく必要があります。

ただし、上場前の公募または売出し等により上場後最初に終了する事業年度の末日までに「親会社等」を有しないこととなる見込みのある場合は親子上場とみなされません。

   

未上場の親会社等を有する企業の上場

上場している親会社等ではなく、未上場の親会社等を有する子会社が上場を目指すケースも存在します。未上場の親会社等を有する場合は、当該親会社等の事業年度若しくは中間会計期間または連結会計年度若しくは中間連結会計期間にかかる直前の決算の内容を開示する必要がでてきます。上場していないため決算を外部に見られたことのなかった親会社等も、子会社の上場に伴い開示の対象となってしまうことにご留意ください。

なお、上場前の資本政策によって非上場の親会社等を有しないこととなる見込みのある場合にはこの限りではありません。

 

再上場

再上場とは何らかの理由により上場を取りやめた会社が再度上場を目指すことを言います。もっとも多いケースはMBOによってフィナンシャルスポンサーを迎え上場を取りやめ、経営を再建し再度上場するケースです。このMBO後の再上場については特に東証でも言及しており、当初のMBO時の計画と新たに上場を目指すこととなった際の事業進捗との整合性や、上場目的等について、公益または投資者保護の観点から上場審査を行うこととされています。

 

日本取引所自主規制法人の理事会審議

日本取引所自主規制法人にて、上場に向けた審査が行われるのですが、上記のようにやや特殊な企業のIPOには理事会による審議が行われることがあります。この場合、上場審査スケジュールは通常の審査期間(本則では約3ヶ月、マザーズ及びJASDAQでは約2ヶ月)に加え、追加で約1ヶ月の審議期間が必要となります。

民営化企業、議決権種類株式の活用などガバナンス上議論を要するスキ ームを採用している企業、再上場企業、上場準備会社グループやその経営陣が過去に重大な事件・法令違反を起こしているなどコンプライアンス上の重大な懸念のある企業、その他新たな論点が含まれる企業、上場時に見込まれる時価総額が概ね1,000億円を超える企業等がこれに該当する可能性があります。

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