関連当事者取引とは上場準備会社と親しい者の間で行われる取引のことを指します。

関連当事者取引は取引行為やその他の経営活動を通じて不当に利益を供与及び享受しやすい性質であるため、関連当事者取引が生じている場合、その取引は上場審査の対象となります。

上場準備会社は上場に向けて、現在生じている関連当事者取引を精査するとともに、今後生じる取引について、関連当事者取引に該当するかどうか、また該当する場合どのように対処するか、など関連当事者取引を管理する体制を構築する必要があります。

 

関連当事者の範囲

【法令別、関連当事者の範囲定義】

※近親者とは二親等内の親族を指します。

 

関連当事者取引の解消

上場審査上、関連当事者取引は原則全て解消する必要があります。

事業上の必要性が高い場合、以下の全てを満たす取引については認められる可能性もありますが、ほとんどの取引については解消することが求められることが実情です。

  • ・上場準備を開始する以前から継続する取引であり、代替の取引先を探すことが難しい場合や、他に有利な取引条件の取引先がない場合など、取引の合理性(事業上の必要性)がある場合
  • ・取引条件について、第三者との比較において妥当性があると認められる場合

また、関連当事者取引を解消することなく上場する場合には、当該取引について取引内容を適正に開示することが求められます。

 

関連当事者取引を感知する体制整備

現在生じている関連当事者取引を精査するとともに、今後生じる取引について、関連当事者取引に該当する場合に取引の可否を事前に判断するため、取引先が関連当事者に該当するかどうかを事前に判断できる体制の整備が必要になります。

まず、関連当事者に該当する者を把握するため、関連当事者を網羅的に洗い出したリストを作成することが一般的であり、上場審査においては当該リストの提出が求められることになります。

リストを作成することで関連当事者を常に把握し、取引時に当該リストに掲載された者との取引がある場合には、取引承認部門において関連当事者取引を事前に感知する体制が構築できます。

また、関連当事者リストを作成することで、関連当事者の範囲が社内で周知される効果も期待できます。

社内研修などで関連当事者取引は原則行わない旨を社内に周知することや、関連当事者取引を行う場合には、本人が事前に管理部門等に申告をするなどの社内ルールまたは規程を整備することも関連当事者取引の事前感知のために重要な役割を果たします。

 

関連当事者取引に関する開示

上場準備に際しては、直前々期以降の関連当事者リストを作成します。

直前々期以降の関連当事者取引は、Ⅰの部「経理の状況」において開示対象となるためです。

ただし開示すべき関連当事者取引は、重要な取引に限定されており、重要性基準については、個人等との取引については10百万円以上の取引、法人等との取引については、各科目ごとに基準が定められております。(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針13項〜18項及び20項)しかし、金額の多寡によらず関連当事者取引は全て上場審査の対象となりますので、いずれの取引も投資家に対し開示することが望ましいです。

その他親会社等との取引など投資判断に重要な影響を及ぼす関連当事者取引と判断されるものは、Ⅰの部「事業等のリスク」への記載が必要です。

 

経営者関与取引について

経営者関与取引とは、経営者自らが営業して獲得した案件・企画した案件や、例外的に経営者が決裁を行っている案件等のような特殊な取引を指します。

これまで上場した企業において経営者関与取引に関連した不祥事が多々発生したことから、経営者関与取引がある場合には当該取引について、上場審査で確認されるようになりました。

経営者関与取引は、一般的に社内からの牽制が効きにくく、不正につながる懸念が大きいため、一般の取引と同様に組織的に取引承認の牽制が行われる体制が整っているか、また実際に行われた取引の承認プロセスについて不適切なものはなかったか、などが確認されます。

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