取引所の規定にしたがい、上場時には形式要件を充足する必要があり、そのためにも上場前に資本政策を整備する必要があります。

形式基準については「2.株式上場の要件 1.金融商品取引所の基準を参照してください。

 

【上場前に一般的に実施する資本政策】

株式分割

形式基準(9)により上場時の単元株式数は100株とする必要があります。また取引所では、個人投資家が投資しやすい環境を整備するために、望ましい投資単位として5万円以上50万円未満という範囲を明示しています。

望ましい投資単位の水準以上(50万円以上)で株式が売買されている場合には、事業年度経過後3か月以内に、5万円以上50万円未満の水準へ移行するための、当該発行者の投資単位の引下げに関する考え方及び方針等を開示することが義務付けられています。

したがって、上場前に株式分割を行い、単元株式数を100株とする前提のもと投資単位の要請に応じる株価水準となる水準に株式分割を実施することが一般的です。

 
単元株制度の導入

形式基準(9)により上場時には単元株制度を導入し1単元を100株とする必要があるため上場前に単元株制度を導入する旨の定款変更を行う必要があります。

 
株式譲渡制限の撤廃

形式基準(10)により上場時には株式譲渡制限が無い状態にするため、定款に株式譲渡制限を定めている場合は定款変更により撤廃する必要があります。

会社法上、株式譲渡制限を撤廃した場合には公開会社となりますので、会社法上も公開会社としての体制を整える必要があります。

 
種類株式の転換

上場時に種類株式を有した状態での上場を目指す会社以外の会社については、形式要件(9)により、優先株式等の種類株式を発行している場合、当該種類株式を普通株式に転換する必要があります。

種類株式の発行要項に予め定めている転換条項に基づき種類株式を普通株式に交換します。

種類株式を有した状態での上場については「2.株式上場の要件 2.様々な上場形態に関する考え方」を参照してください。

 
株主名簿管理人の選定

形式要件(8)により任意の信託銀行と契約を締結し、株主名簿管理人として選定する必要があります。

 
会計監査人の選定

会社法の定めにより大会社(最終事業年度の貸借対照表に計上された資本金額が5億円以上か、負債総額が200億円以上の会社)については会計監査人の設置が必要となります。

上場時の公募または売出しにより大会社に該当することが想定されるため、上場前に予め会計監査人の選定が必要となることとなります。

 
役員の選任(代表取締役、社長等役付役員、常勤監査役等の選任を含む)

会社法332条7項3号及び336条4項4号の規定により、株式譲渡制限を撤廃したことにより取締役または監査役の任期は満了となります。

したがって、再度取締役及び監査役の選任を行う必要があります。この際、取締役または監査役は同一メンバーの重任が原則となります。

社外取締役や社外監査役等を追加で選任することは可能です。

当該選任に伴い、代表取締役の選任、社長や専務等の役付取締役の選任、常勤監査役の選任等の手続きもあわせて必要となる点にご留意ください。

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