偽装請負について教えてください。

偽装請負とは契約の形式が請負契約の形式をとているが、実態としては「請負事業」ではなく「労働者派遣事業」であるものを言います。
偽装請負に該当してしまっている場合、派遣法の違反として、行政指導や勧告、氏名の公表、罰金等の対象となってしまう可能性があります。
さらに、違法な労働者供給を行っていることにもなりますので、職業安定法の違反として、受託者側もクライアント側も罰金(職業安定法第44条、第64条第9号)が科せられてしまう可能性もあります。

請負と労働者派遣の違い
人材を企業に紹介して労働力を提供するのが「労働者派遣」であり、「請負」は労働の成果を提供するものだという点で異なります。
*請負人が仕事の完成に責任を負っているかを、財政面と法律面からチェックし、働く労働者を指揮監督するのは請負人であって注文者ではありません。
自分の使用者からではなく、発注者から直接業務の指示や命令をされるといった場合「偽装請負」である可能性が高です。

4つの判断基準
職業安定法施行規則4条1項
1 作業の完成について事業主としての財政上及び法律上のすべての責任を負うものであること。
2 作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること。
3 作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負うものであること。
4 自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要なる簡易な工具を除く。)若しくはその作業に必要な材料、資材を使用し又は企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであつて、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
*請負人が次の4つの要件を全て満たさなければ違法な労働者供給であるとしていて、1つでも満たさなければ偽装請負となります。
また、4つを満たしていたとしても、法規制をすり抜けるためにした契約であれば、偽装請負である違法な労働者供給として処罰すると職業安定法施行規則4条2項で規定されています。

偽装請負の代表的なパターン
<代表型>
請負と言いながら、発注者が業務の細かい指示を労働者に出したり、出退勤・勤務時間の管理を行ったりしている。

<形式だけ責任者型>
現場には形式的に責任者を置いているが、その責任者は、発注者の指示を個々の労働者に伝えるだけで、発注者が指示をしているのと実態は同じ。

<使用者不明型>
業者Aが業者Bに仕事を発注し、Bは別の業者Cに請けた仕事をそのまま出す。Cに雇用されている労働者がAの現場に行って、AやBの指示によって仕事をする。一体誰に雇われているのかよく分からないというパターンです。

<一人請負型>
実態として、業者Aから業者Bで働くように労働者を斡旋している。ところが、Bはその労働者と労働契約は結ばず、個人事業主として請負契約を結び業務の指示、命令をして働かせている。
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudousha_haken/001.html

請負偽装の罰則
(1)労働者派遣法からみる罰則
偽装請負を行った注文者と請負人は、労働者派遣法59条2号の「許可を受けないで一般労働者派遣事業を行った者」に該当するのが通常である。同条違反の場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科されます。
また、特定労働者の派遣にあたる場合は、同法60条1号の「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処せられる可能性もあります。
(2)労働者供給事業の禁止規定違反
職業安定法44条では「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。」と労働者供給事業の禁止について規定されています。
職業安定法44条の次条にあたる45条には「労働組合等が、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる。」と規定され、偽装請負では許可も得ておらず有償であるのが通常である為「44条の規定に違反した者」(職業安定法64条9号)に該当し、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
処罰は注文者と請負人に科され、罰則の対象者は会社に加え、違反行為を直接行った者に加え、従業員に指示して行わせた会社の代表者、管理職などに広く及ぶ。また、共同受注契約を偽装した偽装請負の場合は、偽装請負の当事者ではない共同受注会社にも処罰が科される可能性があります。
(3)中間搾取の禁止
労働基準法第6条には「何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」と規定があり、中間搾取を禁止しています。
請負を装った労働者供給や労働者派遣があった場合は請負人による中間搾取となる場合があり、注文者も搾取を幇助したとして同条違反となる可能性がある。労働基準法6条違反は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます(同法118条)。
(4)その他
偽装請負は労働者の権利を保護する法規制を免れるためになされるため、次に紹介する事例のように様々な違反が同時に発生することが多く、それらの罰則が適用されることも多々あります。
https://best-legal.jp/impersonation-contract-12957#i-11